亡き妻との思い出が詰まった小物にも注目!『不適切にもほどがある!』美術デザイナーによる「小川家」ガイド

亡き妻との思い出が詰まった小物にも注目!『不適切にもほどがある!』美術デザイナーによる「小川家」ガイド

TBSで現在放送中の宮藤官九郎が脚本を手掛ける金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』。中学校の体育教師である主人公・小川市郎(阿部サダヲ)が、1986(昭和61)年から2024(令和6)年の現代へタイムスリップ!? しかしコンプライアンスが重視される令和において、昭和の感覚を持ったおじさんの無自覚かつ不適切ギリギリ(?)の言動は、さまざまな事件を起こし、令和を生きる人々に考えるきっかけを与えてきた。

SNSを中心に、昭和の表現や行動様式が満載だと話題になっている本作の美術セットにフォーカス! パート1となる前回に紹介した喫茶&バー「すきゃんだる」に続いて、主人公・市郎が愛娘である純子(河合優実)と住む「小川家」について、美術デザインを担当する岡嶋宏明氏に話を聞いた。

1986年当時の分譲マンション“らしさ”を研究しました

金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』小川家ダイニングキッチン

小川家のセットをつくるにあたってまず考えたのは、市郎たちはどんな家に住んでいるのか、ということでした。一戸建てなのか分譲マンションなのか。世帯収入はどのくらいなのか。金子文紀監督と打ち合わせをする中で、「小川家は、妻のゆり(イワクラ/蛙亭)が生きているときから住んでいる家」、「亡くなった今も、ゆりが遺したものを今でも大切に使いながら2人で暮らしている」という裏ストーリーができました。そして、それならば分譲マンションに住んでいる設定にしようという話になりました。

金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』小川家ダイニングキッチン

続いて考えたのは、1980年代当時のマンションの特徴でした。当時から建っているマンションをいくつか見学し、最近建てられたマンションとの違いをリサーチ。昭和のマンションは現代のマンションと比べると、ところどころ天井が低かったり、構造上の建材や配管などの出っ張りが多かったり、家具を置く際に邪魔な梁や角柱も多かったり…。そんな昭和のマンションらしい凸凹感を意識してつくられたのが、今回のセットです。

’86年を感じさせるインテリアや雑貨を収集

金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』小川家リビング

僕をはじめとする昭和生まれのスタッフの記憶だけを頼りにすると、インテリアや小物など小川家に置くものに偏りや記憶違いが生じたり、やりすぎたりする危険が生じると思いました。そこで当時放送されていたドラマ『毎度おさわがせします』(TBS系)や雑誌のインテリア特集などを装飾担当者とチェック。どんなものが流行っていて、どのように使っていたのかを研究しました。平成生まれのスタッフには、実家の様子を思い出してもらったり、家族から当時のことを聞いてもらったり、写真を借りてもらったりなども。もちろんインターネットで調べることもできましたが、その時代の映像や雑誌に実際に触れることで、よりリアルに当時を感じることができたんです。
特に気を配ったのは、1987年以降につくられた商品は使わないということ。1986年にあって不自然ではないものだけを探す、という作業は意外と大変でしたね。

金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』小川家純子の部屋

昭和のアイテムは、リース(レンタル)や蚤の市(フリーマーケット)、さらにフリマアプリのお世話にもなりながら装飾担当者に収集してもらいました。純子の部屋に置くアイテムを集めたところ、キャラクターものの多さにびっくり。権利の関係でドラマでの使用を断念したキャラクターもありましたが、1986年当時はさまざまな種類のキャラクターが存在・流行していたんだと改めて思いました。

金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』小川家の電話

そして先ほど話した“ゆりが生きているときから住んでいる家”であるという表現に一役買っているのが、布製のカバーがかかったダイヤル式電話。ゆりが用意したであろうものを、亡くなった今も大切に使っている…ということを表現するアイテムです。このようなアイテムを置くことで、2人が今でもゆりのことを大切に思っていることを感じていただけると思います。

「今回はキャストの皆さんに臨場感を持ってもらえる、お芝居が広がるセットを目指しました」という岡嶋氏。細部にまでこだわってつくられた小川家のセットにも注目してドラマを観てみると、また新たな発見がありそうだ。

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