『クロサギ』黒崎のパーソナルな部分が唯一見られる場所とは?世界観を作り上げるセットを紹介!

『クロサギ』黒崎のパーソナルな部分が唯一見られる場所とは?世界観を作り上げるセットを紹介!

TBSで放送中の平野紫耀主演の金曜ドラマ『クロサギ』。詐欺によって家族を失った主人公・黒崎高志郎(平野)が、「詐欺師を騙す詐欺師=クロサギ」として家族の仇を探し出し、立ち向かう物語だ。

黒崎の新たな仇・ひまわり銀行の取締役・宝条兼人(佐々木蔵之介)の登場で、ますます今後の展開から目が離せないが、今回は、本作の世界観作りに欠かせない美術デザイナー・安藤帆南氏にインタビュー。黒崎の住む部屋、甘味処「かつら」、そして氷柱(黒島結菜)の実家・吉川家のセットについて話を聞いた。

黒崎の広い部屋の理由は“詐欺”のため!?

クロサギ

氷柱の部屋の隣に位置する黒崎の部屋は、氷柱の部屋とは違い、その広さはかなりのもの。大家だからではなく特別な設定があるという。
「2部屋を繋げてリノベーションした設定なので、襖を外して拡張した分、広く見えます。黒崎は基本的に詐欺のことしか考えていないので、“生活感がない部屋”というのがテーマになっています。詐欺に関する本などは雑然と置いてあるのですが、そこで黒崎が暮らしている雰囲気はなるべく薄くするようにデザインしました。無機質な感じが伝わればいいなと思っています」。

クロサギ

黒崎の部屋の中でも特に目を引くのは衣装部屋。雑然としたリビングとは一変、衣装や小物がまるでおしゃれな洋服屋のようにディスプレイされている。
「衣装部屋は、黒崎が変身する場所なので、ある意味秘密の部屋みたいなもの。洋服や小物に目がいくよう、建具や壁などは白を基調にしています。さらに高級なアイテムも多いのでディスプレイ要素を入れて、几帳面に整頓することで、リビングとの違和感を演出しています」。

クロサギ

靴が梯子に並んでいたり、サングラスが綺麗にディスプレイされているが、物量は相当なものだ。「狭い中に物が密集しているので、この広さの部屋の中にこれだけの物をいかに整然と並べるか、一番苦労した部分です」と明かしてくれた安藤氏。そんな生活感が取り払われた部屋だが、ひとつだけ黒崎のパーソナルな部分が垣間見える場所が。

クロサギ

「愛猫、クロのスペースです。黒崎はキャットタワーを購入するようなタイプには見えないと思いますが、それが逆に狙いでもあります。その横には猫グッズもあり、唯一人間らしさが出る、本来の黒崎に戻れる場所になっています」。

甘味処「かつら」は和洋折衷の不思議な空間

クロサギ

昼間は町内会の人や甘味を楽しむお客さんで溢れ、夜は桂木(三浦友和)が裏取引をする場所へと変化する。そんな二面性を持つ「かつら」のセット作りのポイントとは?
「プロデューサーや監督の要望もあって、重厚感がある老舗だけど、リノベーションを行った甘味処というイメージが最初にありました。さらに、桂木さんが厨房で作業するお芝居を撮影したいという希望もあったので、店内は奥行きのある背景を意識しながら厨房が抜けるように、広めにデザインしています。また、外光を多く取り入れることで昼間は明るく、夜は日差しがない分全体的にトーンが落ちて怪しい雰囲気になるようにしています」。

クロサギ

随所に感じられる老舗感も目を引く。
「桂木さんが古くからいるというイメージを演出するため、様々な箇所にエイジングをかけて年季が入っているように見せています。ただ、和と洋のバランスがとても難しかったです。カウンター周りに洋風でアンティーク調の小物を置いたり、庭には松や紅葉を置いて和風にしたり。どちらかに偏ってしまうと、喫茶店かお寿司屋さん風になってしまうので、装飾部と色々な小物を見ながら吟味しました」と教えてくれた。 

クロサギ

こだわりはさらに、細部に至る。「カウンターは空間に映えるように木部色のトーンを明るくし、一枚板風に作っていただきました。ツヤのある質感にこだわっています。あとカウンター後ろの作り棚は、映ったときの印象が良くなるように本物のタイルを入れています」と。桂木、早瀬としてこの店を切り盛りする三浦、中村ゆりからは「すごく作り込まれていて良い空間だね」という感想があったそう。「そう言っていただけるのは嬉しいです」と笑顔で語ってくれた。

クロサギ

様々な試行錯誤の末に出来上がった甘味処「かつら」だが、その中でも安藤氏が一番見て欲しいと語るのは「のれん」。「渾身の一枚です(笑)。監督から、『和らしからぬ色味になるよう水色とピンクを使い、不思議な魅力のテイストだけど古い建物に馴染むように』とオーダーをいただきまして…。椿をモチーフに私が描きました。椿は花そのものが頭からポトッと落ちてしまうので、あんまり縁起が良くないのですが、その不穏さを逆手に取っています」という。

“実家の理想”系が詰まった吉川家

クロサギ

詐欺被害に遭いながらも辰樹(船越英一郎)が守りたかったのが吉川家だ。人には親切にするという真っ直ぐな心根を持つ氷柱(黒島結菜)が暮らしてきた家の作りは、まさに万人がイメージする“実家”そのもの。「元畳屋という設定で、一般的な温かい家庭というのを意識してデザインしました。演出部から要望のあった抜け感を出すため、和室の奥にダイニングを作っています」。

クロサギ

細部を見ていくとどこか“懐かしい”と思える小物で溢れる吉川家。その中でもこだわりは「和室は暖色系、ダイニングは寒色系と照明の色を変えているところです。あと、雑然とした実家感を出すために小物を所狭しと並べています」とのこと。

そして一人暮らしをする氷柱の部屋は、そんな吉川家を彷彿する作りになっているのが見て取れる。

クロサギ

「氷柱は吉川家で育っているので、どこか似た雰囲気はあると思います。引っ越してきたばかりなので、物はあまり多くないですが、ひたすら法律の勉強をしている、普通の女子大生の部屋になるようデザインしています」と教えてくれた。
隣に住む黒崎の部屋と比べるとリノベーション前の様子が良く分かる。ストーリーとともに、そういった部分に注目すると、新たな楽しみ方ができそうだ。
 

■番組概要
〔タイトル〕

金曜ドラマ『クロサギ』
〔放送日時〕
毎週金曜 よる10時~10時54分

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